X Version 11, Release 7.7
Version 1.0
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X Window System is a trademark of The Open Group.
(訳)
(以下に定める条件に従い、本ソフトウェアおよび関連文書のファイル(以下「ソフトウェア」)の複製を取得するすべての人に対し、ソフトウェアを無制限に扱うことを無償で許可する。これには、ソフトウェアの複製を使用、複写、変更、結合、掲載、頒布、サブライセンス、および/または販売する権利、およびソフトウェアを提供する相手に同じことを許可する権利も無制限に含まれる。)
(上記の著作権表示および本許諾表示を、ソフトウェアのすべての複製または重要な部分に記載するものとする。)
(ソフトウェアは「現状のまま」で、明示であるか暗黙であるかを問わず、何らの保証もなく提供される。ここでいう保証には、商品性、特定の目的への適合性、および権利非侵害についての保証も含まれるが、それに限定されるものではない。X CONSORTIUM は、契約行為、不法行為、またはそれ以外であろうと、ソフトウェアに起因または関連し、あるいはソフトウェアの使用またはその他の扱いによって生じる一切の請求、損害、その他の義務について何らの責任も負わないものとする。)
(X Consortium の名称は、この表示に記載されている場合を除き、X Consortium の事前の書面による承認を得ずに、宣伝であろうとその他の形であろうと、ソフトウェアの販売を促進するもの、またはソフトウェアの使用その他の扱いを奨励するものに使用してはならない。)
(X Window System は The Open Group の商標である。)
目次
X Session Management Protocol (XSMP) は、利用者がセッションを保存・復元する仕組みについて、標準規格を打ち立てるために考案された。セッション(session)とは、クライアントの集合であり、一つ一つのクライアントは独自の状態を持つ。セッションの管理はセッション・マネージャ(session manager)と呼ばれるネットワーク・サービスで行う。セッション・マネージャは利用者に成り代わってクライアントに命令を発する。この命令でクライアントに状態保存を促したり、クライアントを停止したりすることができる。クライアントは次のような形で自身の状態を保存する。即ち、後々クライアントを再起動することができ、かつ、まるで一度も停止されていなかったかのようにクライアントの処理を再開できる形で保存する。クライアントの「状態」には、編輯中のファイルの情報や、ファイル中の現在の書込み位置、未処理のデータ交換の開始点に関する情報等を含めることが可能である。クライアントを再起動する手段については、本プロトコルでは定めない。
本プロトコルでは都合上、セッション・マネージャのクライアント(client)を「セッション・マネージャに対する接続」と定義している。クライアントは大抵、単一の X ディスプレイ(display) に接続されたアプリケーション・プログラムを実行するプロセスであるが、必ずしもこのような形態を採らなければいけない訳ではない。複数の X ディスプレイに接続されたクライアントも、接続される X ディスプレイを持たないクライアントも存在する。
Session Management Library(セッション・マネジメント・ライブラリ、SMlib)は、XSMP の低水準 C 言語インタフェイスである。Xt のような、より高水準のツールキット(toolkits)によって、セッション管理の細部の多くがクライアントから隠蔽されることを予定している。セッション・マネージャ側が用いる高水準ツールキットの開発も行われるかもしれないが、今のところそのような取組みは存在しない。
SMlib は大まかに二つの部分に分けられる。
一つは、セッションに参加するクライアントが呼び出す関数群。
一つは、セッション・マネージャが呼び出す関数群。
両方の関数群を用いて入れ籠型セッション・マネージャ(nested session manager)として振舞うアプリケーションもあり得る。これは、アプリケーションがセッション・マネージャであるとともに、他のセッションのクライアントでもあるということである。一例を挙げれば、メール文の編輯のためのテキスト・エディタを起動するメール・プログラムがある。このメール・プログラムは正規のセッションの一員でありながら、同時にテキスト・エディタに対してセッション・マネージャとして振舞う。
クライアントの初期化作業は、セッション・マネージャへの接続とクライアント ID(client-ID) の取得から成る。このクライアント ID によって、セッション中のクライアントを一意に同定する(uniquely identifies)ことができる。セッション・マネージャは、セッション中の各クライアントのプロパティ群一覧を保持している。これらのプロパティ群には、クライアントの環境と、格別に重要である、クライアントの再起動の仕方とを記載する(後者はプロパティ SmRestartCommand に記す)。クライアントが自身の状態を保存する際、クライアントの複数の実体(instantiation)を一つ一つ独立に管理し得るような形で保存作業を行うことが期待される。例えば、クライアントが特定の実体の状態を記録する際、そのファイル名の一部にこの識別子を含めても良い。また、クライアント ID はクライアントを再起動するための命令文( SmRestartCommand)の中にも記録する。こうすることでクライアントは再開後も同じ識別子を保持できるようになる。
一度クライアントがセッション・マネージャに対して初期化された後は、同クライアントはそのセッション・マネージャから来るメッセージに応答可能でなければならない。例えば、クライアントは状態の保存や終了作業を行うよう求められるかもしれない。終了する場合、セッション・マネージャは各クライアントに対して、利用者とやり取りして終了を取り消す機会を与えても良い。
X Session Management Protocol は、Inter-Client Exchange (ICE) Protocol を基礎にして、その上層として作られている。ICE プロトコルは、単一の接続の上で、複数プロトコルの多重通信を行う目的で設計された。結果として、SMlib を利用するには、ICE ライブラリの仕組みに関する若干の知識が求められる。
ICE ライブラリでは、メッセージを処理するためにコールバックを利用する。クライアントは、ICE 接続上で読み込むべきデータを発見した時、関数 IceProcessMessages
を呼び出す。IceProcessMessages
は、メッセージ・ヘッダ部分を読み込み、その中にある主たる命令コード(major opcode)を確認して、そのメッセージがどのプロトコルに基づくものなのかを判断する。次いで、対応するプロトコル・ライブラリが同メッセージを開くために駆動される。そして、そのメッセージはコールバックを通じてクライアントへ回される。
次の点を特に心得ておくべきである。即ち、SMlib を利用するアプリケーションには、ICE 接続上に読み込むべきデータが生じた時にそれを検知するコードが備わっていなければならない。これは、ICE 接続を示すファイル記述子に対して select
を呼び出すことで実現できる。しかし、より一般的には、XtAppAddInput
を用いて、ICE 接続上に読み込むべきデータが生じる度に IceProcessMessages
を呼び出すコールバックを登録しておくことになろう。
さらに込み入った点を述べれば、どのファイル記述子に対して select
を実行するべきなのかを知るには、ICE 接続がどのように生成されるのかを理解しておく必要がある。クライアント側において、セッション・マネージャとの接続を開くには、SmcOpenConnection
を呼び出さなければならない。SmcOpenConnection
は内部で IceOpenConnection
を呼び出している。 IceOpenConnection
は、クライアントとセッション・マネージャの間に既設の ICE 接続が存在しないか判断する。大抵の場合、接続は未だ存在せず、新しい ICE 接続が作られる。ここが重要な点であるが、接続は共用される可能性があるので、クライアント側では ICE 接続が何時作成・破棄されたのかは分からない。これを解決するため、ICE ライブラリでは、ICE 接続の開設・閉鎖の度に呼び出される看視手続き(watch procedures)をアプリケーションが登録できるようになっている。看視手続きを用いることで、select
呼出しの対象となる ICE ファイル記述子の一覧から記述子を削除し、あるいは同一覧に対して記述子を追加することができるようになる。
セッション・マネージャ側では事情が少し異なる。セッション・マネージャは、ICE 接続の生成過程を自在に制御できる。セッション・マネージャは先ず、クライアントからの接続申請の受付けを始めるために、IceListenForConnections
を呼び出さなければならない。接続の試みがあれば、セッション・マネージャは IceAcceptConnection
を呼び出し、次いで新しい ICE ファイル記述子を、select
呼出しの対象となる記述子の一覧に加える。
ICE 接続に関係するライブラリ関数について、さらに詳しく知りたければ、規格文書「Inter-Client Exchange Library」を見よ。
アプリケーションは(セッション・マネージャとクライアントの両者は)、ヘッダファイル <X11/SM/SMlib.h
> を取り込む(include)ものとする。このヘッダファイルでは、SMlib の全てのデータ型と関数型を定義する。SMlib.h
はヘッダファイル <X11/SM/SM.h
> を取り込む(include)。SM.h では SMlib の全ての定数を定義する。
SMlib が ICE に依存しているので、アプリケーションは 、“-lSM
-lICE
” の指定を用いて、SMlib と ICElib の双方を結合(link)するものとする。
目次
この章では、セッション・マネジメントのクライアントが以下の動作をどのようにして行うのかを述べる。
セッション・マネージャへの接続
接続の切断
コールバックの修正
セッション・マネージャのプロパティの設定、削除、取得
利用者とのやり取り
「Save Yourself」の要求
「Save Yourself Phase 2」の要求
「Save Yourself」の完了
Smc の情報取得関数の利用
エラー処理
セッション・マネージャに対する接続を開設するには、SmcOpenConnection
を用いる。
SmcConn SmcOpenConnection(
char *network_ids_list, SmPointer context, int xsmp_major_rev, int xsmp_minor_rev, unsigned long mask, SmcCallbacks *callbacks, char *previous_id, char **client_id_ret, int error_length, char *error_string_ret)
;
|
セッション・マネージャの ID(複数)を指定する。 |
|
不透明型オブジェクトへのポインタ、もしくは |
|
XSMP の主たる版番号(major version)。アプリケーションが対応している版の中、最も新しい版の番号。 |
|
XSMP の従たる版番号(minor version)。アプリケーションが対応している版の中、最も新しい版の番号(上の |
|
どのコールバックを登録するのかを示す取捨表(mask)。(訳註:次の引数の中身を選り分ける) |
|
登録するコールバックの群。このコールバック群は、セッション・マネージャから届いたメッセージへの応答に用いられる。 |
|
前回セッションからのクライアント ID。 |
|
戻り値として、今セッションで使用するクライアント ID が入る。 |
|
引数 |
|
エラーがあれば、ここに null 文字終端のエラー・メッセージが入る。引数 |
引数 network_ids_list
は、セッション・マネージャのネットワーク ID 群をコンマで区切って並べた、null 文字終端の文字列である。network_ids_list
が NULL
であれば、環境変数 SESSION_MANAGER
の値を用いることになる。ネットワーク ID の一つ一つは、以下の書式で記す。
tcp/ <hostname> : <portnumber> | もしくは |
decnet/ <hostname> :: <objname> | もしくは |
local/ <hostname> : <path> |
まず最初のネットワーク ID を用いて接続を試みる。それが失敗したら、二番目のネットワーク ID を用いて接続を試みる。以下同様に試行。
接続が確立すると、SmcOpenConnection
は、続いてセッション・マネージャにクライアントを登録する。クライアントが前回セッションに属していて、今回再起動される場合、previous_id
には前回セッションにおけるクライアント ID を表す null 文字終端の文字列を容れる。クライアントが初めてセッションに加わるのであれば、previous_id
は NULL
に設定するものとする。previous_id
が指定されたものの、セッション・マネージャに無効であると判定された場合、SMlib は previous_id
を NULL
に設定して、再度クライアントの登録を試みる。
SmcOpenConnection
が成功すれば、戻り値として SmcConn
型の不透明な接続ポインタが返り、引数 client_id_ret
にそのセッションで使用するクライアント ID が入る。client_id_ret
は用が済んだ時 free
で解放するものとする。SmcOpenConnection
が蹉跌した場合、同関数は戻り値として NULL
を返し、error_string_ret
に失敗の理由を入れる。
SMlib では、セッション・マネージャへの接続を確立するにあたって、ICE プロトコルを利用していることに注意する。クライアントとセッション・マネージャの間に既に ICE 接続が存在する場合、セッション・マネジメントでも同 ICE 接続を利用する可能性がある。
引数 context によって、他のプロトコルと ICE 接続を共有することに対するクライアント側の態度を示す。context が NULL
であれば、当関数の呼出者は常に接続の共有を試みる。context が NULL
でなければ、呼出方は、自身が指定したものとは異なる、NULL でない context と結びついた既設の ICE 接続を用いない。
先に述べたように(第三章、SMlib の ICE への依存を知る)、クライアントは何時 ICE 接続が生成・破棄されるのかを看視しておく必要がある(IceAddConnectionWatch
と IceRemoveConnectionWatch
を用いて)。そして同者は、select
によって ICE 接続上の読み込むべきデータの存在を検知する度に、IceProcessMessages
を呼び出さなければならない。詳しい情報は規格文書「Inter-Client Exchange Library」を参照。
引数 callbacks には、セッション・マネージャからのイベントに応答する際に用いるコールバックの一群を渡す。引数 mask によって、設定するコールバックが何れと何れなのかを指定する。この版(SMlibの)で名前が出ているコールバックは全て必須である。引数 mask は、同ライブラリの将来の版において後方互換性を保つために必要なものである。
mask
の値を作るには、下記の値を組み合わせ、論理和をとる。
SmcSaveYourselfProcMask |
SmcDieProcMask |
SmcSaveCompleteProcMask |
SmcShutdownCancelledProcMask |
クライアントは、各コールバックに対して一つづつ、クライアント・データへのポインタを付録することができる。SMlib がコールバックを呼び出す時、同ポインタは引数としてコールバックに渡ることになる。
typedef struct { struct { SmcSaveYourselfProc callback; SmPointer client_data; } save_yourself; struct { SmcDieProc callback; SmPointer client_data; } die; struct { SmcSaveCompleteProc callback; SmPointer client_data; } save_complete; struct { SmcShutdownCancelledProc callback; SmPointer client_data; } shutdown_cancelled; } SmcCallbacks;
「Save Yourself」に応じるコールバックの関数型は SmcSaveYourselfProc
である。
typedef void (*SmcSaveYourselfProc)(
SmcConn smc_conn, SmPointer client_data, int save_type, Bool shutdown, int interact_style, Bool fast)
;
|
セッション・マネジメントの接続オブジェクト。 |
|
コールバック登録時に指定したクライアント・データ。 |
|
保存する情報の種別(訳註:local、global、both)を記す。 |
|
終了作業中であるか否かを記す。 |
|
利用者とのやり取りの許可種別(訳註:none、errors、any)。 |
|
True であれば、クライアントはできる限り速く自身の状態を保存する。 |
セッション・マネージャは、クライアントの拓本を採りたい(checkpoint)時に、あるいは終了作業の直前に、クライアントに対して「Save Yourself」メッセージを送る。これによってクライアントは自身の状態を保存できるようになる。クライアントは、同メッセージに対する応答として 0 回以上の SmcSetProperties
を呼び出し、同クライアントの再起動方法を記すプロパティを更新する。全てのプロパティを設定し終えたら、クライアントは SmcSaveYourselfDone
を呼び出す。
引数 interact_style
が SmInteractStyleNone
であれば、クライアントは状態保存の作業中に利用者とやり取りしてはいけない。interact_style
が SmInteractStyleErrors
であれば、クライアントは異常事態が生じた場合に限って利用者とやり取りしてもよい。interact_style
が SmInteractStyleAny
であれば、クライアントは自由に利用者とやり取りできる。一度に一つのクライアントしか利用者とやり取りできないため、クライアントは、SmcInteractRequest
を呼び出した後、セッション・マネージャから「Interact」メッセージが届くのを待たなければならない。利用者とのやり取りを終えたクライアントは SmcInteractDone
を呼び出す。クライアントが SmcInteractRequest
を呼び出して良いのは、「Save Yourself」メッセージを受信してから SmcSaveYourselfDone
を呼び出すまでの間に限られる。
引数 save_type
が SmSaveLocal
であれば、クライアントは、その時点での自身の状態を映すようにプロパティ群を更新しなければならない。踏み込んで云えば、クライアントは、同クライアントの利用者から見える状態を復元するのに十分な情報を保存するものであり、他の利用者から見える状態に影響を与えるべきではない。save_type
が SmSaveGlobal
であれば、利用者は、クライアントがその全てのデータを恒久的、且つ広域に利用可能な記録装置に保存することを望んでいるということである。save_type
が SmSaveBoth
であれば、クライアントは上記の作業の両方を行うものとする(クライアントは先ず恒久的記録装置にデータを保存し、その後に自身のプロパティ群を更新する)。
以下に例を挙げる。
ワード・プロセッサ(word processor)に SmSaveLocal
型の「Save Yourself」が届いた場合、同ワード・プロセッサは一時ファイルを作成し、そこに以下の情報を書き込む。即ち、編輯中のファイルのその時点における中身、カーソルの位置、及び編輯を行っているセッションの他の情報を書き込む。同者は次いで、その一時ファイルを見つけるのに十分な情報を SmRestartCommand プロパティに記録する。
ワード・プロセッサに SmSaveGlobal
型の「Save Yourself」が届いた場合、同ワード・プロセッサは単純に編輯中のファイルを保存する。
ワード・プロセッサに SmSaveBoth
型の「Save Yourself」が届いた場合、同ワード・プロセッサは先ず編輯中のファイルを保存する。次に同者は一時ファイルを作成し、そこにカーソルの位置や編輯中のファイルは何れなのかといった情報を書き込む。最後に、その一時ファイルを見つけるのに十分な情報を SmRestartCommand プロパティに記録する。
引数 shutdown
は、システムが終了作業中であるか否かを表す。この引数の値の真偽によって、利用者とのやり取りの形に異同がある。終了作業中でなければ、クライアントは自身の状態を保存し、「Save Complete」メッセージを待ち受ける。終了作業中であれば、クライアントは自身の状態を保存した後、「Die」メッセージもしくは「Shutdown Cancelled」メッセージが同者に届くまで、利用者とのやり取りを差し控えなければならない。
引数 fast
は、クライアントができる限り速く状態保存を行うべきか否かを表す。例えば、電源が落ちそうであるとセッション・マネージャに知れた時、同セッション・マネージャは fast
を True
に設定するであろう。
「Die」メッセージに応じるコールバックの関数型は SmcDieProc
である。
|
セッション・マネジメントの接続オブジェクト。 |
|
コールバック登録時に指定したクライアント・データ。 |
セッション・マネージャは、停止したいクライアントに対して「Die」メッセージを送信する。同メッセージを受信したクライアントは、SmcCloseConnection
の呼出しで応じる。上品に振舞うセッション・マネージャは、「Die」メッセージに先立って「Save Yourself」メッセージを送付するはずである。
「Save Complete」に応じるコールバックの関数型は SmcSaveCompleteProc
である。
|
セッション・マネジメントの接続オブジェクト。 |
|
コールバック登録時に指定したクライアント・データ。 |
「Shutdown Cancelled」に応じるコールバックの関数型は SmcShutdownCancelledProc
である。
|
セッション・マネジメントの接続オブジェクト。 |
|
コールバック登録時に指定したクライアント・データ。 |
セッション・マネージャが「Shutdown Cancelled」メッセージを送信するのは、利用者とのやり取りの中で終了処理が取り消された時である(第五章五節「利用者とやり取りする」を参照)。このメッセージを受信したクライアントは、まるで終了作業が存在しなかったかのように処理を続けることができる。クライアントがまだ SmcSaveYourselfDone
を呼び出していないのであれば、同者は、保存作業を中断して、引数 success に False
を付した SmcSaveYourselfDone
を呼び出しても良いし、保存作業を続行して、その結果を引数 success
に付して SmcSaveYourselfDone
を呼び出しても良い。
セッション・マネージャとの接続を閉じるには、SmcCloseConnection
を用いる。
|
セッション・マネジメントの接続オブジェクト。 |
|
「接続を断つ理由」を構成する文字列の数。 |
|
接続を断つ理由。 |
引数 reason_msgs
は、セッションからの退座がクライアントにとって想定内のものであれば、大抵は NULL
である。それ以外の場合、同引数には、終了の理由を表す、null 文字終端かつ Compound Text 形式の文字列の配列が入る。セッション・マネージャは、この理由を表すメッセージを利用者に表示するものとする。
SMlib はセッション・マネージャに対する接続を確立するのに ICE プロトコルを使用しているので、セッション・マネジメント以外の様々なプロトコルが同一 ICE 接続上で運用されている可能性がある。SmcCloseConnection
が呼び出された時、実際に ICE 接続が閉鎖されるのは、同 ICE 接続上の全てのプロトコルが終了済みの場合に限られる。ICE 接続が開閉される度に呼び出されるコールバックの設営方法を知るには、ICElib の規格文書を調べて IceAddConnectionWatch
と IceRemoveConnectionWatch
を見れば良い。大抵は、このコールバックを用いて、select
の(あるいはXtAppAddInput
及び XtRemoveInput
の)呼出し対象たる有効な ICE ファイル記述子群に対し、記述子の追加・削除を行う。
SmcCloseConnection
は次の値の何れか一つを返す。
SmcClosedNow
- (SmcConn が使用していた)ICE 接続はこの時点で閉鎖された。看視手続き(watch procedures)が呼び出され、接続資源も解放された。
SmcClosedASAP
- 接続の中で入出力エラーが発生しているか、もしくは SmcCloseConnection
が入れ籠状態の IceProcessMessages
の中から呼び出されている(訳註:参考:X11R7.7/lib/libSM-1.2.1/src/sm_client.c、X11R7.7/lib/libICE-1.0.8/src/shutdown.c)。看視手続きがこの時点で呼び出されているものの、接続資源は「できる限り早く」解放される(入れ籠の階層が 0 に達し、IceProcessMessages
が IceProcessMessagesConnectionClosed
を返した時)。
SmcConnectionInUse
- 接続は、他の有効なプロトコルによって使用されているので、この時点では閉鎖されなかった。
SmcOpenConnection
で設定したコールバックを変更するには、SmcModifyCallbacks
を用いる。
|
セッション・マネジメントの接続オブジェクト。 |
|
どのコールバックを変更するのかを示す取捨表(mask)。(訳註:次の引数の中身を選り分ける) |
|
新しいコールバック群。 |
引数 mask
の値を作るには、下記の値を組み合わせ、論理和をとる。
SmcSaveYourselfProcMask |
SmcDieProcMask |
SmcSaveCompleteProcMask |
SmcShutdownCancelledProcMask |
クライアントのセッション・マネジメント・プロパティを設定するには、SmcSetProperties
を用いる。
|
セッション・マネジメントの接続オブジェクト。 |
|
プロパティの数。 |
|
設定するプロパティの配列。 |
設定するプロパティ群は、プロパティのポインタの配列で指定する。関数 SmcSetProperties
によって、プロパティの元の値は上書きされる。セッションが再開された時、セッション・マネージャは必ずしもプロパティの値を復元しないということに注意する。このため、クライアントはセッション・マネージャを、アプリケーション固有の状態情報を記録するデータベースとして使うべきではない。
セッション・マネジメント・プロパティと構造体 SmProp に関する説明は、第七章、「セッション・マネジメント・プロパティ」にある。
クライアントが前に設定したプロパティを削除するには、SmcDeleteProperties
を用いる。
|
セッション・マネジメントの接続オブジェクト。 |
|
プロパティの数。 |
|
削除するプロパティの配列。 |
クライアントが前に記録したプロパティを取得するには、SmcGetProperties
を用いる。
|
セッション・マネジメントの接続オブジェクト。 |
|
目的のプロパティが返ってきた時に呼び出されるコールバック。 |
|
コールバック |
SmcGetProperties
の戻り値は、失敗すれば 0、成功すれば正の値である。
このライブラリは目的のプロパティが返ってくるまで入力待機する(block)するわけではない、という点に注意する。SmcPropReplyProc
型のコールバックは、そのようなやり方ではなく、データの準備が整い次第呼び出される。(訳註:セッション・マネージャが関数 SmsReturnProperties を呼び出し、その内部で SM_PropertiesReply メッセージが発行されたら、_SmcProcessMessage がそれを拾い、コールバックを実行する(libSM-1.2.1)。)
typedef void (*SmcPropReplyProc)(
SmcConn smc_conn, SmPointer client_data, int num_props, SmProp **props)
;
|
セッション・マネジメントの接続オブジェクト。 |
|
|
|
取得したプロパティの数。 |
|
取得したプロパティの配列。 |
一つ一つプロパティを解放するには、SmFreeProperty
を用いる(第八章「データの解放」を参照)。ポインタの配列自体は free
を用いて解放する。
interact_style
に SmInteractStyleErrors
もしくは SmInteractStyleAny
を付した「Save Yourself」メッセージが届いた時、クライアントは利用者とやり取りすることができる。一度に一つのクライアントしか利用者とやり取りできないため、クライアントは SmcInteractRequest
を呼び出した上で、セッション・マネージャから「Interact」メッセージが返るのを待たなければならない。
Status SmcInteractRequest(
SmcConn smc_conn, int dialog_type, SmcInteractProc interact_proc, SmPointer client_data)
;
|
セッション・マネジメントの接続オブジェクト。 |
|
クライアントが利用者に提示するダイアログ・ウィンドウの種類。 |
|
セッション・マネージャから「Interact」メッセージが届いた時に呼び出すコールバック。 |
|
「Interact」メッセージが届いた時にコールバック |
SmcInteractRequest
の戻り値は、失敗すれば 0、成功すれば正の値である。
引数 dialog_type
には、SmDialogError
もしくは SmDialogNormal
を指定する。クライアント側がエラー・ダイアログによる表示を望めば前者を、通常のダイアログによる表示を望めば後者を用いる。
もし終了処理(shutdown)が進行中であれば、利用者に、終了作業を中止するという選択肢が与えられる可能性もあるので注意する。終了作業が中止された場合、まだ利用者とやり取りしていないクライアントには、「Interact」メッセージの代わりに「Shutdown Cancelled」メッセージが届くことになる。
セッション・マネージャから「Interact」メッセージが届くと、コールバック SmcInteractProc
が呼び出される。
|
セッション・マネジメントの接続オブジェクト。 |
|
コールバック登録時に指定したクライアント・データ。 |
利用者とのやり取り(「Interact」メッセージを受けた)の後には、SmcInteractDone
を呼び出すものとする。
|
セッション・マネジメントの接続オブジェクト。 |
|
|
引数 cancel_shutdown
に True
を入れて良いのは、元になった「Save Yourself」において shutdown が True
に、interact_style
が SmInteractStyleErrors
もしくは SmInteractStyleAny
に設定されていた場合に限られる。
セッション・マネージャに拓本を採るよう(checkpoint)要請するには、SmcRequestSaveYourself
を用いる。
void SmcRequestSaveYourself(
SmcConn smc_conn, int save_type, Bool shutdown, int interact_style, Bool fast, Bool global)
;
|
セッション・マネジメントの接続オブジェクト。 |
|
保存する情報の種別(訳註:local、global、both)を記す。 |
|
終了作業中であるか否かを記す。 |
|
利用者とのやり取りの許可種別(訳註:none、errors、any)。 |
|
True であれば、クライアントはできる限り速く自身の状態を保存する。 |
|
「Save Yourself」の受け手を決める。 |
引数 save_type
、shutdown
、interact_style
、及び fast
に関しては、
The save_type
, shutdown
,第五章一の一、「Save Yourself に応じるコールバック」 でより詳しく述べてある。
global
が True
に設定されている場合、結果として生じる「Save Yourself」はセッション中の全てのクライアントに送信される。例えば、無停電電源(Uninterruptible Power Supply、UPS)の開発者は、UPS の状態を監視するセッション・マネジメント・クライアントを提供し、電源が落ちそうな時に素早く終了処理を提起できるであろう。
global
が False
であれば、「Save Yourself」は、これを要求したクライアントにしか送信しないものとする。
「Save Yourself」を受け取ったクライアントは、自分以外の全クライアントの状態情報を保存するため、それらが静遊状態(quiescent)となった時に通知してもらえるよう要請することができる。そのためには、SmcRequestSaveYourselfPhase2
を用いる。
Status SmcRequestSaveYourselfPhase2(
SmcConn smc_conn, SmcSaveYourselfPhase2Proc save_yourself_phase2_proc, SmPointer client_data)
;
|
セッション・マネジメントの接続オブジェクト。 |
|
セッション・マネージャから「Save Yourself Phase 2」メッセージが届いた時に呼び出されるコールバック。 |
|
「Save Yourself Phase 2」メッセージが届いた時にコールバック |
SmcRequestSaveYourselfPhase2
の戻り値は、失敗すれば 0、成功すれば正の値である。
この要求関数を使用するのは、他のクライアント群を管理するクライアントである(例えば、ウィンドウ・マネージャ、ワークスペース・マネージャなど)。マネージャ(管理者)は、管理対象クライアント全てが遊転状態(idle state)となり、それらの状態情報が保存可能になったことを確かめなければならない。
「Save Yourself」メッセージを受けて状態情報を保存した後には、SmcSaveYourselfDone
を呼び出すものとする。
|
セッション・マネジメントの接続オブジェクト。 |
|
「Save Yourself」の作業を成功裡に終えた場合、 |
クライアントは、セッション・マネージャへの登録の後、SmcSaveYourselfDone
を呼び出す前に、各必須プロパティ(required property)を少なくとも一回設定していなければならない。
SmcProtocolVersion
は、引数のセッションで運用されているセッション・マネジメント・プロトコルの主たる版番号(major version)を返す。
SmcProtocolRevision
は、引数のセッションで運用されているセッション・マネジメント・プロトコルの従たる版番号(minor version)を返す。
SmcVendor
は、セッション・マネージャの開発者(owner)を表す何らかの識別文字列を返す。この文字列は free
を呼び出して解放するものとする。
SmcRelease
は、セッション・マネージャの版番号(release number)を表す文字列を返す。この文字列は free
で解放するものとする。
SmcClientID
は、引数の接続オブジェクトのクライアント ID を表す、null 文字終端の文字列を返す。この情報は SmcOpenConnection
でも取得できる(利便性を考えて ID 取得専用の関数も用意した)。取得したクライアント ID が不用になれば、そのポインタに対して free
を適用する。
SmcGetIceConnection
は、引数のセッション・マネジメント接続オブジェクトが内部に保持する ICE 接続オブジェクトを返す。ICE 接続オブジェクトを用いて、接続に関する詳しい情報を得ることができる。IceConn を付して呼び出せる有用な関数を挙げれば、IceConnectionNumber
、IceConnectionString
、IceLastSentSequenceNumber
、IceLastReceivedSequenceNumber
及び IcePing
がある。詳細は規格文書「Inter-Client Exchange Library」を参照。
セッション・マネージャからクライアントへ予期せぬプロトコル・エラーが届けられた場合、SMlib はエラー・ハンドラ(エラー処理器)を呼び出す。標準のエラー・ハンドラが始めから用意されている。このハンドラは、単にエラー・メッセージを stderr
に表示し、エラーの重症度(severity)が致命的(fatal)であれば、終了処理に飛ぶ(exit)。クライアントは、関数 SmcSetErrorHandler
を呼び出すことで、このエラー・ハンドラを変更することができる。
|
エラー・ハンドラ(エラー処理器)。標準のハンドラに戻すには |
SmcSetErrorHandler
の戻り値は、これまで使用していたエラー・ハンドラである。
SmcErrorHandler
の関数型は次の通り。
typedef void (*SmcErrorHandler)(
SmcConn smc_conn, Bool swap, int offending_minor_opcode, unsigned long offending_sequence_num, int error_class, int severity, IcePointer values)
;
|
セッション・マネジメントの接続オブジェクト。 |
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指定された情報(values)のバイト順交換が必要か否かを示す印。 |
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エラーを起こしたメッセージの従命令コード(minor opcode)。 |
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エラーを起こしたメッセージの通し番号(sequence number)。 |
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エラーを起こしたメッセージのエラー・クラス(error class)。 |
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従命令コードとエラー・クラスに応じて必要となる、追加の情報(values)。(訳註:X11R7.7/lib/libSM-1.2.1/include/X11/SM/SMlib.h では、values は「SmPointer」である。但し同ヘッダファイルにおいて「typedef IcePointer SmPointer;」。) |
このエラー・ハンドラは、プロトコルに関係したエラーを処理するものであることに注意する。入出力エラーに対応するエラー・ハンドラを設定するには、IceSetIOErrorHandler
を用いる。詳しくは規格文書「Inter-Client Exchange Library」を見よ。
目次
この章では、セッション・マネジメントのサーバが以下の動作をどのようにして行うのかを述べる。
ライブラリの初期化
クライアントの登録
「Save Yourself」メッセージの送信
「Save Yourself Phase 2」メッセージの送信
「Interact」メッセージの送信
「Save Complete」メッセージの送信
「Die」メッセージの送信
終了処理(shutdown)の中止
プロパティ関連の応答
クライアントに対する PING 送信
クライアントの接続切断後の片付け
Sms 情報取得関数の利用
エラー処理
SmsInitialize
は、セッション・マネージャが最初に呼び出す SMlib 関数である。この関数を通じて、セッション・マネージャの情報を設定し、さらに、新たなクライアントがセッション・マネージャへの接続を試みる度に呼び出されるコールバックを登録する。
Status SmsInitialize(
const char *vendor, const char *release, SmsNewClientProc new_client_proc, SmPointer manager_data, IceHostBasedAuthProc host_based_auth_proc, int error_length, char *error_string_ret)
;
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セッション・マネージャの開発者を表す文字列。 |
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セッション・マネージャの版番号(release number)を表す文字列。 |
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新たなクライアントがセッション・マネージャへの接続を試みる度に呼び出されるコールバック。 |
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コールバック |
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ホスト名に基づく認証を行う際、その作業を担うコールバック。 |
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次の引数 |
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null 文字終端のエラー・メッセージがここに入る(メッセージがあれば)。 |
関数 SmsInitialize
を呼び出した後、セッション・マネージャは、新たな接続を待ち受けるため、関数 IceListenForConnections
を呼び出す。以降、クライアントが接続を試みる度に、セッション・マネージャは IceAcceptConnection
を呼び出す。
認証について詳しく知りたければ、第九章、「クライアントの認証」」を見よ(ホスト名に基づく認証(host based authentication)も含む)。また、ICE 接続の申請の待受けと受理については、規格文書「Inter-Client Exchange Library」を見る。
新たなクライアントがセッション・マネージャへの接続を試みる度に、コールバック SmsNewClientProc
が呼び出される。セッション・マネージャは新しい不透明な接続オブジェクトを得て、以後のクライアントとのやり取りで常にこれを使用する(訳註:libSM-1.2.1/src/sm_manager.c の中の関数 _SmsProtocolSetupProc において、SmsNewClientProc 型のコールバックを呼び出す直前に、構造体 SmsConn 型の接続オブジェクトの変数を宣言し、領域を確保し、同接続オブジェクトのメンバの設定をしている。)。この時に、セッション・マネージャは、クライアントから送られて来るであろう種々のメッセージに応じるためのコールバック群を登録しなければならない。
typedef Status (*SmsNewClientProc)(
SmsConn sms_conn, SmPointer manager_data, unsigned long *mask_ret, SmsCallbacks *callbacks_ret, char **failure_reason_ret)
;
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新しい不透明な接続オブジェクト。 |
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コールバック登録時に指定したマネージャ・データへのポインタ。 |
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戻り値が入る。セッション・マネージャで実際に設定されたコールバックは何れと何れなのかを表す。 |
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戻り値として、セッション・マネージャに登録されたコールバック群が入る。 |
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ここに失敗の理由が入る。 |
SmsNewClientProc
が失敗した時は、実値 0 の Status を返し、失敗の理由を表す文字列を failure_reason_ret
に割り当てるものとする。この記憶領域を解放するのは SMlib の仕事である。
セッション・マネージャは、クライアントが発するイベントに応答する際に用いるコールバックの一群を登録しなければならない。引数 mask_ret
は、コールバックの中の何れと何れが設定されたのかを表す。この版(SMlibの)で名前が出ているコールバックは全て必須である。引数 mask_ret
は、同ライブラリの将来の版において後方互換性を保つために必要なものである。
mask の値を作るには、下記の値を組み合わせ、論理和をとる。
SmsRegisterClientProcMask |
SmsInteractRequestProcMask |
SmsInteractDoneProcMask |
SmsSaveYourselfRequestProcMask |
SmsSaveYourselfP2RequestProcMask |
SmsSaveYourselfDoneProcMask |
SmsCloseConnectionProcMask |
SmsSetPropertiesProcMask |
SmsDeletePropertiesProcMask |
SmsGetPropertiesProcMask |
セッション・マネージャは、各コールバックに対して、そのコールバック専用のマネージャ・データへのポインタを登録することができる。このポインタは、SMlib によってコールバックが呼び出される時、引数として渡される。
typedef struct { struct { SmsRegisterClientProc callback; SmPointer manager_data; } register_client; struct { SmsInteractRequestProc callback; SmPointer manager_data; } interact_request; struct { SmsInteractDoneProc callback; SmPointer manager_data; } interact_done; struct { SmsSaveYourselfRequestProc callback; SmPointer manager_data; } save_yourself_request; struct { SmsSaveYourselfPhase2RequestProc callback; SmPointer manager_data; } save_yourself_phase2_request; struct { SmsSaveYourselfDoneProc callback; SmPointer manager_data; } save_yourself_done; struct { SmsCloseConnectionProc callback; SmPointer manager_data; } close_connection; struct { SmsSetPropertiesProc callback; SmPointer manager_data; } set_properties; struct { SmsDeletePropertiesProc callback; SmPointer manager_data; } delete_properties; struct { SmsGetPropertiesProc callback; SmPointer manager_data; } get_properties; } SmsCallbacks;
「Register Client」に応じるコールバックは、クライアントがセッション・マネージャに接続してから最初に呼び出されるコールバックである。その関数型は SmsRegisterClientProc
である。
typedef Status (*SmsRegisterClientProc)(
SmsConn sms_conn, SmPointer manager_data, char *previous_id)
;
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セッション・マネジメントの接続オブジェクト。 |
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コールバック登録時に指定したマネージャ・データ。 |
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前回セッションで使用していたクライアント ID。 |
クライアントとの間で他のやり取りを始める前に、セッション・マネージャにクライアントを登録しなければならない。
前回セッションからのクライアントを再起動する場合、previous_id
には前回セッションで使用していたクライアント ID を表す、null 文字終端の文字列が入る。用が済んだ時は previous_id
のポインタに対して free
を呼び出す。クライアントが初めてセッションに加わるのであれば、previous_id
は NULL
となる。
previous_id
が無効なものであれば、この時点では、セッション・マネージャは申請してきたクライアントを登録するべきではない。当コールバックは実値 0 の Status を返すものとし、これを受けてエラー・メッセージが同クライアントに送信される。同クライアントは previous_id を NULL
にして、再度登録を試みるものとする。
それ以外の場合、セッション・マネージャは関数 SmsRegisterClientReply
(後述)を呼び出し、唯一無二のクライアント ID でクライアントを登録するものとする。この時、コールバック SmsRegisterClientProc
は実値 1 の Status を返すものとする。
「Interact Request」に応じるコールバックの関数型は SmsInteractRequestProc
である。
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セッション・マネジメントの接続オブジェクト。 |
|
コールバック登録時に指定したマネージャ・データ。 |
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クライアントが利用者に提示しようとするダイアログ・ウィンドウの種類。 |
interact_style
を SmInteractStyleErrors
もしくは SmInteractStyleAny
に設定した「Save Yourself」メッセージがクライアントに届いた時、同クライアントは利用者とやり取りすることができる。一度に一つのクライアントしか利用者とやり取りできないので、クライアントは利用者とのやり取りの許可を求めなければならない。セッション・マネージャは、利用者とのやり取りを望む全てのクライアントから成る待ち行列(queue)を保持するものとする。またセッション・マネージャは、一度に一つのクライアントへ「Interact」メッセージを送信し、次のクライアントへ進む前に「Interact Done」メッセージを待ち受ける。
引数 dialog_type
には、SmDialogError
もしくは SmDialogNormal
を指定する。クライアント側がエラー・ダイアログによる表示を望めば前者を、通常のダイアログによる表示を望めば後者を用いる。
もし終了処理(shutdown)が進行中であれば、利用者に終了処理を中止するという選択肢が与えられる可能性もある。終了処理が中止された場合(これは「Interact Done」メッセージで指定する)、セッション・マネージャは、利用者とのやり取りを求めていたクライアントの一つ一つに対して「Shutdown Cancelled」メッセージを送信するものとする。
クライアントが利用者とのやり取りを終えた時は、コールバック SmsInteractDoneProc
を呼び出す。
typedef void (*SmsInteractDoneProc)(
SmsConn sms_conn, SmPointer manager_data, Bool cancel_shutdown)
;
|
セッション・マネジメントの接続オブジェクト。 |
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コールバック登録時に指定したマネージャ・データ。 |
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利用者が終了処理全体の中止を要求しているのか否かを記す。 |
終了処理を中止できるのは、元になった「Save Yourself」において shutdown が True
に、interact_style
が SmInteractStyleErrors
もしくは SmInteractStyleAny
に設定されていた場合に限られる、ということに注意。
「Save Yourself Request」に応じるコールバックの関数型は SmsSaveYourselfRequestProc
である。
typedef void (*SmsSaveYourselfRequestProc)(
SmsConn sms_conn, SmPointer manager_data, int save_type, Bool shutdown, int interact_style, Bool fast, Bool global)
;
|
セッション・マネジメントの接続オブジェクト。 |
|
コールバック登録時に指定したマネージャ・データ。 |
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保存する情報の種別(訳註:local、global、both)を記す。 |
|
終了作業中であるか否かを記す。 |
|
利用者とのやり取りの許可種別(訳註:none、errors、any)。 |
|
True であれば、クライアントはできる限り速く自身の状態を保存する。 |
|
「Save Yourself」の受け手を決める。 |
「Save Yourself Request」によって、セッション・マネージャにチェックポイント処理(checkpoint、保存処理)あるいは終了処理(shutdown)を始めるよう促す。引数 save_type
、shutdown
、interact_style
、及び fast
については、第六章三節、『「Save Yourself」メッセージを送信する』を参照。
global
が True
に設定されていれば、結果として生じる「Save Yourself」メッセージは全てのアプリケーションに送信される。global
が False
であれば、「Save Yourself」は、これを要求した当のクライアントにしか送信されない。
「Save Yourself Phase 2 Request」に応じるコールバックの関数型は SmsSaveYourselfPhase2RequestProc
である。
|
セッション・マネジメントの接続オブジェクト。 |
|
コールバック登録時に指定したマネージャ・データ。 |
他のクライアント群を管理するクライアントから、この要求が送られて来る(例えば、ウィンドウ・マネージャ、ワークスペース・マネージャなど)。マネージャ(管理者)は、管理対象クライアント全てが遊転状態(idle state)となり、それらの状態情報が保存可能になったことを確かめなければならない。
クライアントが「Save Yourself」メッセージを受けて、自身の状態情報を保存し終えた時、 SmsSaveYourselfDoneProc
が呼び出される。
|
セッション・マネジメントの接続オブジェクト。 |
|
コールバック登録時に指定したマネージャ・データ。 |
|
|
クライアントは、セッション・マネージャへの登録の後、「Save Yourself Done」を送信する前に、各必須プロパティ(required property)を少なくとも一回設定していなければならない。
クライアントが適切に終了した場合(即ち、同者が SmcCloseConnection
を呼び出した場合)、コールバック SmsCloseConnectionProc
が呼び出される。
typedef void (*SmsCloseConnectionProc)(
SmsConn sms_conn, SmPointer manager_data, int count, char **reason_msgs)
;
|
セッション・マネジメントの接続オブジェクト。 |
|
コールバック登録時に指定したマネージャ・データ。 |
|
「接続を断つ理由」を構成する文字列の数。 |
|
接続を断つ理由。 |
セッションからの退座が利用者にとって想定内のものであれば、引数 reason_msgs
は、大抵は NULL
であり、引数 count
は零(0)である。それ以外の場合、前者の引数には、終了の理由を表す、null 文字終端かつ Compound Text 形式の文字列の配列が入る。セッション・マネージャは、この理由を表すメッセージを利用者に表示するものとする。
理由を表すメッセージ群の文字列資源を解放するには、SmFreeReasons
を呼び出す。第八章、「データの解放」も見よ。
クライアントがセッション・マネジメント・プロパティの設定を試みた時、コールバック SmsSetPropertiesProc
が呼び出される。
typedef void (*SmsSetPropertiesProc)(
SmsConn sms_conn, SmPointer manager_data, int num_props, SmProp **props)
;
|
セッション・マネジメントの接続オブジェクト。 |
|
コールバック登録時に指定したマネージャ・データ。 |
|
設定するプロパティの数。 |
|
設定するプロパティの配列。 |
設定するプロパティ群は、プロパティのポインタの配列で指定する。セッション・マネジメント・プロパティと構造体 SmProp については、第七章、「セッション・マネジメント・プロパティ」で説明する。
元々設定されていたプロパティの値は上書きされ得る。予め意味と役割(semantics)の定義されたプロパティが存在する。セッション・マネージャは、定義されていなかったプロパティがあれば、新たに記録する必要がある。
一つ一つのプロパティを解放するには、SmFreeProperty
を用いる。第八章、「データの解放」も参照。ポインタの配列自体は free
で解放するものとする。
クライアントがセッション・マネジメント・プロパティの削除を試みた時は、コールバック SmsDeletePropertiesProc
が呼び出される。
typedef void (*SmsDeletePropertiesProc)(
SmsConn sms_conn, SmPointer manager_data, int num_props, char **prop_names)
;
|
セッション・マネジメントの接続オブジェクト。 |
|
コールバック登録時に指定したマネージャ・データ。 |
|
次の引数におけるプロパティの数 |
|
削除するプロパティの配列。 |
削除するプロパティは文字列の配列で指定する。セッション・マネジメント・プロパティと構造体 SmProp については、第七章、「セッション・マネジメント・プロパティ」で説明する。
クライアントが自分の設定したプロパティの群を取り出そうとした時、コールバック SmsGetPropertiesProc
が呼び出される。
|
セッション・マネジメントの接続オブジェクト。 |
|
コールバック登録時に指定したマネージャ・データ。 |
セッション・マネージャは、SmsReturnProperties
で応え、相手のクライアントが設定したプロパティ全てを返すものとする。
コールバック SmsRegisterClientProc
を受けて、クライアントを登録するには、SmsRegisterClientReply
を用いる。
|
セッション・マネジメントの接続オブジェクト。 |
|
唯一無二のクライアント ID を表す、null 文字終端の文字列。 |
SmsRegisterClientReply
の戻り値は、失敗すれば 0、成功すれば正の値である。失敗となるのは、SMlib が、クライアント ID の複製を保持するための領域を確保できなかった時である。この複製は、SMlib の内部の用途に充てる。
クライアントが自身の登録を試みた時に、NULL
ではない previous_id
を指定した場合、client_id
をその previous_id
と一致させるものとする。
さもなければ、client_id
には、セッション・マネージャが新たに生成した唯一無二のクライアント ID を容れる。加えて、セッション・マネージャは、クライアントの登録後直ちに type
= Local
、shutdown
= False
、interact-style
= None
、及び fast
= False
とした「Save Yourself」メッセージを送信する。
一度クライアントにクライアント ID が割り当てられると、同クライアントはその ID を恒久的に使い続けるということに注意する。クライアントが一旦終了した後に再起動した場合、再び同じ ID が割り当てられる。クライアント ID が、計算機から計算機へ、利用者から利用者へ、セッション・マネージャからセッション・マネージャへ、クライアントの同一性を保ちながら流通していくのが望ましい。これと、クライアント ID の永続性とを合わせると、クライアント ID は地球上で(globally)唯一無二である必要がある、ということになる。(訳註:???)
地球上で(globally)唯一無二のクライアント ID を生成するには、関数 SmsGenerateClientID
を呼び出す。(訳註:???)
|
セッション・マネジメントの接続オブジェクト。 |
ID を生成できなかった場合、戻り値は NULL
である。さもなければ、クライアント ID が関数の戻り値となる。このクライアント ID は、用が済んだ時は free
で解放するものとする。
「Save Yourself」をクライアントに送信するには、SmsSaveYourself
を用いる。
void SmsSaveYourself(
SmsConn sms_conn, int save_type, Bool shutdown, int interact_style, Bool fast)
;
|
セッション・マネジメントの接続オブジェクト。 |
|
保存する情報の種別(訳註:local、global、both)を記す。 |
|
終了作業中であるか否かを記す。 |
|
利用者とのやり取りの許可種別(訳註:none、errors、any)。 |
|
True であれば、クライアントはできる限り速く自身の状態を保存する。 |
セッション・マネージャは、クライアントの拓本を採るため(checkpoint it)、あるいは終了処理の直前に、クライアントに「Save Yourself」メッセージを送信する。これによって、クライアントは自身の状態情報を保存できるようになる。クライアントは、0 個以上の「Set Properties」メッセージで応じ、クライアントの再起動方法を記すプロパティ群を更新する。全てのプロパティを設定し終えたら、クライアントは「Save Yourself Done」メッセージを送信する。
interact_style
が SmInteractStyleNone
であれば、クライアントは、状態保存の最中に利用者とやり取りしてはならない。interact_style
が SmInteractStyleErrors
であれば、クライアントは異状が発生した時に限って利用者とやり取りすることができる。interact_style
が SmInteractStyleAny
の場合、クライアントは、目的を問わず自由に利用者とやり取りして良い。クライアントは、利用者とのやり取りに先立って、「Interact Request」メッセージを送信し、且つセッション・マネージャから「Interact」メッセージが送られてくるのを待たなければならない。クライアントは、利用者とのやり取りを終えたところで、「Interact Done」メッセージを送信するものとする。「Interact Request」メッセージは、「Save Yourself」の後、且つ「Save Yourself Done」の前であれば、何時送信してもよい。
引数 save_type
が SmSaveLocal
であれば、クライアントは、その時点での自身の状態を映すようにプロパティ群を更新しなければならない。踏み込んで云えば、クライアントは、同クライアントの利用者から見える状態を復元するのに十分な情報を保存するべきであり、他の利用者から見える状態に影響を与えるべきではない。save_type
が SmSaveGlobal
であれば、利用者は、クライアントがその全てのデータを恒久的、且つ広域に利用可能な記録装置に保存することを望んでいるということである。save_type
が SmSaveBoth
であれば、クライアントは上記の作業の両方を行うものとする(クライアントは先ず恒久的記録装置にデータを保存し、その後に自身のプロパティ群を更新する)。
引数 shutdown
は、システムが終了作業中であるか否かを表す。この引数の値の真偽によって、利用者とのやり取りの形に異同がある。終了作業中でなければ、クライアントは保存作業を行なって、通常の処理を再開することができる。終了作業中であれば、クライアントは自身の状態を保存した後、「Die」メッセージもしくは「Shutdown Cancelled」メッセージが同者に届くまで、利用者とのやり取りを差し控えなければならない。これは、保存作業後に利用者が行ったものは全て失われてしまうからである。
引数 fast
は、クライアントができる限り速く状態保存を行うべきか否かを表す。例えば、電源が落ちそうであるとセッション・マネージャに知れた時、同セッション・マネージャは fast
を True
に設定する。
クライアントに「Save Yourself Phase 2」メッセージを送信するには、SmsSaveYourselfPhase2
を用いる。
|
セッション・マネジメントの接続オブジェクト。 |
セッション・マネージャは、前もって「Save Yourself Phase 2 Request」メッセージを送ってきていたクライアントに対して、当メッセージを送信する。このメッセージを受け取ったクライアントは次の事実を知る。即ち、同者以外の全てのクライアントの状態が定まり、これらのクライアントと結び付いた自身の状態情報を保存できるようになったことを知る。
クライアントに「Interact」メッセージを送信するには、SmsInteract
を用いる。
|
セッション・マネジメントの接続オブジェクト。 |
「Interact」メッセージを受信したクライアントは、利用者とのやり取りを独占することができる。クライアントは、利用者とのやり取りを終えた時、セッション・マネージャに対して「Interact Done」メッセージを送信しなければならない。
クライアントに「Save Complete」メッセージを送信するには、SmsSaveComplete
を用いる。
|
セッション・マネジメントの接続オブジェクト。 |
セッション・マネージャは、チェックポイント処理(checkpoint、セッションの状態を保存する処理)を終えた時、このメッセージを送信する。これ以後、クライアントは自由に状態を変更することができるようになる。
クライアントに「Die」メッセージを送信するには、SmsDie
を用いる。
|
セッション・マネジメントの接続オブジェクト。 |
セッション・マネージャは、終了する前に、自身が「Die」メッセージを送ったクライアントのそれぞれから、「Connection Closed」メッセージが戻って来るのを待ち受けるものとする。その際、所定の時間が過ぎれば自動的に終了する。
終了処理(shutdown)を中止するには、SmsShutdownCancelled
を用いる。
|
セッション・マネジメントの接続オブジェクト。 |
当関数の呼出し以後、クライアントはまるで終了作業が存在しなかったかのように処理を続けることができる。クライアントは、まだ「Save Yourself Done」メッセージを送信していないのであれば、保存作業を中止した上で、引数 success に False
を付して「Save Yourself Done」を送信してもよいし、あるいは、保存作業を続行し、その結果を引数 success
に反映させて「Save Yourself Done」を送信してもよい。
「Get Properties」メッセージを受けて、セッション・マネージャは SmsReturnProperties
を呼び出す。
|
セッション・マネジメントの接続オブジェクト。 |
|
プロパティの数。 |
|
クライアントに引き渡すプロパティの配列。 |
プロパティ群の引き渡しには、プロパティを指すポインタの配列を用いる。セッション・マネジメント・プロパティと構造体 SmProp については、第七章、「セッション・マネジメント・プロパティ」で説明する。
クライアントが依然として健在か否かを調べるには、ICE ライブラリに備わっている関数 IcePing
を用いる。そのためには、SmsGetIceConnection
を用いて、ICE 接続を取得しなければならない(第六章十二節、「Sms の情報取得関数を使う」を見よ)。
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有効な ICE 接続オブジェクト。 |
|
PING に対する返信が届いた時に呼び出すコールバック。 |
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コールバック |
PING に対する返信が用意できた時は(もし返信が存在すれば)、コールバック IcePingReplyProc
が呼び出される。セッション・マネージャは、ある種の待受け期限を備えるものとし、その期限を過ぎれば、同者はクライアントが予期せず終了したものと見做す。
|
有効な ICE 接続オブジェクト。 |
|
|
セッション・マネージャに「Connection Closed」メッセージが届いた時、あるいは、他の方法を通じてクライアントの接続切断を検知した時、同セッション・マネージャは接続オブジェクトを解放するために関数 SmsCleanUp
を呼び出すものとする。
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セッション・マネジメントの接続オブジェクト。 |
SmsProtocolVersion
は、引数のセッションで運用されているセッション・マネジメント・プロトコルの主たる版番号(major version)を返す。
SmsProtocolRevision
は、引数のセッションで運用されているセッション・マネジメント・プロトコルの従たる版番号(minor version)を返す。
SmsClientID
は、引数の接続オブジェクトのクライアント ID を表す、null 文字終端の文字列を返す。クライアント ID が用済みになった時は、そのポインタに対して free
を呼び出すものとする。
クライアントのホスト名(host name)を取得するには、SmsClientHostName
を用いる。このホスト名はクライアントの再起動に必要となる。
取得した文字列は、「protocol
/
hostname
」の書式から成る。この中の「protocol
」部分には、{tcp
, decnet
, local
} の何れか一つが入る。取得した文字列が用済みになった時は、同文字列に対して free
を呼び出すものとする。
SmsGetIceConnection
は、引数のセッション・マネジメント接続オブジェクトが内部に保持する ICE 接続オブジェクトを返す。ICE 接続オブジェクトを用いて、接続に関する詳しい情報を得ることができる。IceConn を引数にして呼び出せる有用な関数を挙げれば、IceConnectionNumber
と IceLastSequenceNumber
がある。詳細は規格文書「Inter-Client Exchange Library」を参照。
クライアントからセッション・マネージャへ予期せぬプロトコル・エラーが届けられた場合、SMlib はエラー・ハンドラ(エラー処理器)を呼び出す。標準のエラー・ハンドラが始めから用意されている。このハンドラは、単にエラー・メッセージを表示するだけである(終了 exit しない)。セッション・マネージャは、関数 SmsSetErrorHandler
を呼び出すことで、このエラー・ハンドラを変更することができる。
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エラー・ハンドラ(エラー処理器)。標準のハンドラに戻すには |
SmsSetErrorHandler
の戻り値は、これまで使用していたエラー・ハンドラである。SmsErrorHandler
の関数型は次の通り。
typedef void (*SmsErrorHandler)(
SmsConn sms_conn, Bool swap, int offending_minor_opcode, unsigned long offending_sequence_num, int error_class, int severity, IcePointer values)
;
|
セッション・マネジメントの接続オブジェクト。 |
|
指定された情報(values)のバイト順交換が必要か否かを示す印。 |
|
エラーを起こしたメッセージの従たる命令コード(minor opcode)。 |
|
エラーを起こしたメッセージの通し番号(sequence number)。 |
|
エラーを起こしたメッセージのエラー・クラス(error class)。 |
|
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従命令コードとエラー・クラスに応じて必要となる、追加の情報(values)。(訳註:X11R7.7/lib/libSM-1.2.1/include/X11/SM/SMlib.h では、values は「SmPointer」である。但し同ヘッダファイルにおいて「typedef IcePointer SmPointer;」。) |
このエラー・ハンドラは、プロトコルに関係したエラーを処理するものであることに注意する。入出力エラーに対応するエラー・ハンドラを設定するには、IceSetIOErrorHandler
を用いる。詳しくは規格文書「Inter-Client Exchange Library」を見よ。
各プロパティは、構造体 SmProp を以って記述する。
typedef struct { char *name; /* プロパティの名前 */ char *type; /* プロパティの型 */ int num_vals; /* 値(values)の数 */ SmPropValue *vals; /* 値(values)の配列 */ } SmProp; typedef struct { int length; /* 値(value)の長さ*/ SmPointer value; /* 値(value) */ } SmPropValue;
X セッション・マネジメント・プロトコルでは、予め定義してあるプロパティの目録を用意しており、そのプロパティの中のいくつかはクライアントによる設定が必要である。下記の表で、予め定義してあるプロパティを挙げ、どのプロパティが必須なのかを明らかにする。各プロパティには固有の型がある。
SmCARD8 型は、1 バイトの値一つから成る。SmARRAY8 型は、バイトの配列一つから成る。SmLISTofARRAY8 は、バイトの配列の配列一つから成る。
Name | Type | POSIX Type | Required |
---|---|---|---|
SmCloneCommand | OS-specific | SmLISTofARRAY8 | Yes |
SmCurrentDirectory | OS-specific | SmARRAY8 | No |
SmDiscardCommand | OS-specific | SmLISTofARRAY8 | No* |
SmEnvironment | OS-specific | SmLISTofARRAY8 | No |
SmProcessID | OS-specific | SmARRAY8 | No |
SmProgram | OS-specific | SmARRAY8 | Yes |
SmRestartCommand | OS-specific | SmLISTofARRAY8 | Yes |
SmResignCommand | OS-specific | SmLISTofARRAY8 | No |
SmRestartStyleHint | SmCARD8 | SmCARD8 | No |
SmShutdownCommand | OS-specific | SmLISTofARRAY8 | No |
SmUserID | SmARRAY8 | SmARRAY8 | Yes |
* 外部の保管場所(例えば、状態情報ファイル state file)に記録される状態情報があれば、必須である。
SmCloneCommand
再起動するのがアプリケーションの複製であるという点を除けば、SmRestartCommand と同じようなものである。唯一の相違点は、アプリケーションの登録時にクライアント ID を申告しないことである。POSIX システムにおいては、型(type)は SmLISTofARRAY8 とする。
SmCurrentDirectory
POSIX に準拠したシステムにおいては、現在のディレクトリを表す値が入る。この値は SmProgram のプログラムを起動する前に設定する必要があり、プロパティの型は SmARRAY8 である。
SmDiscardCommand
このプロパティに入っている命令がクライアントの稼働しているホスト(接続から判断)に届くと、その時点の状態に関するあらゆる情報が破棄される。この命令が定められていなければ、セッション・マネージャはクライアントの状態情報の全てが SmRestartCommand に記述されているものと考える。POSIX システムでは、プロパティの型は SmLISTofARRAY8 とする。
SmEnvironment
POSIX に準拠したシステムにおいては、このプロパティの型は SmLISTofARRAY8 になる。配列中の ARRAY8 には、環境変数名とその値とが交互に格納される。
SmProcessID
ここに OS 独自のプロセス識別子を記す。POSIX システムにおいては、関数 getpid
の戻り値を Latin-1 文字列(10進数表記)に変換したものを入れる。
SmProgram
実行中のプログラムの名前。POSIX システムにおいては、この名前に、関数 execve
への第一引数の値を用いる。プロパティの型は SmARRAY8 とする。
SmRestartCommand
このプロパティに入っている命令がクライアントの稼働しているホスト(接続から判断)に届くと、クライアントが記録時の状態で再起動される。POSIX 準拠のシステムにおいては、プロパティの型は SmLISTofARRAY8 であり、この配列の各要素は argv
配列の各要素を表す。この再開命令は、クライアントが確実に指定されたクライアント ID で起動されるように記述するものとする。
SmResignCommand
プロパティ SmRestartStyleHint を SmRestartAnyway
に設定したクライアントでは、このプロパティに次の命令を記述する。即ち、クライアントの動作結果を取り消し、保存された状態を消去する命令を記述する。例として以下の場合を考える。利用者が xmodmap を起動し、セッション・マネージャに登録し、プロパティ SmRestartStyleHint に SmRestartAnyway
を設定し、そして xmodmap を終了する。利用者の要請を受けてセッション・マネージャがこの動作を取り消し得るように、xmodmap は動作結果を取り消す命令を SmResignCommand に登録する。
SmRestartStyleHint
プロパティ SmRestartStyleHint が設けられている場合、そこにはクライアントの好む再起動方式が入っている。もしこの方式が指定されていなければ、値は SmRestartIfRunning
と見做される。以下がプロパティの値の候補である。
Name | Value |
---|---|
SmRestartIfRunning | 0 |
SmRestartAnyway | 1 |
SmRestartImmediately | 2 |
SmRestartNever | 3 |
通常は SmRestartIfRunning
方式を用いる。クライアントが前回のセッションの終了時点で稼働中であった場合、次のセッションで同クライアントを再起動する。
SmRestartAnyway
方式の指定をセッション・マネージャは次のように理解する。クライアントが現セッションの終了以前に停止(exit)していても、次のセッションで再起動するべきである、と。これがあくまで示唆(hint)に過ぎず、セッション・マネージャはどのアプリケーションを再起動させるかについて利用者の定めた方針に従う、ということに注意する。
SmRestartAnyway
を指定したクライアントにおいては、プロパティ SmResignCommand と SmShutdownCommand にも、クライアント終了後に状態情報を元に戻すための命令を設定するべきである。
SmRestartImmediately
方式は SmRestartAnyway
に似ている。しかし前者は、後者の示唆するものに加えて、クライアントが間を置かずに実行されることをも含意している。クライアントが終了したら、セッション・マネージャは現行のセッション内で同クライアントの再起動を図るものとする。
SmRestartNever
方式が意味するのは、クライアント側が次のセッションで再起動されることを望んでいないということである。
SmShutdownCommand
この命令はセッション終了時に実行される。SmRestartStyleHint を SmRestartAnyway
に設定したクライアントは停止した後も状態情報を持ち続けるので、そうしたクライアントの後片付けを行う。そのようなクライアントは依然としてセッションの一員なので、クライアントは保存済みの如何なる状態情報も消去してはならない。例として、起動時にカメラを立ち上げる機能を持ったクライアントを考える。起動後、直ちにクライアントは停止する。利用者はセッション終了時にカメラを切りたい。このクライアントは、SmRestartStyleHint を SmRestartAnyway
に設定し、カメラを切るための SmShutdownCommand を登録する。
SmUserID
利用者の ID を記す。POSIX に準拠したシステムにおいては、ここに利用者の名前(構造体 passwd の メンバ pw_name
)が入る。
プロパティを一つ解放するには、SmFreeProperty
を用いる。
|
解放するプロパティ。 |
コールバック SmsCloseConnectionProc
で取得した、理由を表す文字列を解放するには、SmFreeReasons
を用いる。
|
理由を表す文字列の数。 |
|
理由を表す文字列の配列。解放作業の対象。 |
先にも述べた通り、セッション・マネジメント・プロトコルは ICE を基礎にして、その上層として作られている。ICE プロトコルにおいては、認証は二つの段階で実施する
第一段階は、ICE 接続を開設する時に行われる。
第二段階は、ICE 接続において「Protocol Setup」を行う時に実施する。
利用可能な認証方式(authentication methods)は、実装によって異なる(使用している ICElib と SMlib の実装による)。詳しくは規格文書「Inter-Client Exchange Library」を参照。
一つのアプリケーションの複数のスレッドで SMlib を使うことを宣言するには、IceInitThreads
を呼び出すものとする(これは SMlib に限らず ICElib を基層とするライブラリ全てで同じ)。詳しくは規格文書「Inter-Client Exchange Library」を参照。