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原文はこちら
翻訳にあたって、オープンソースグループ・ジャパンの MIT ライセンスの訳を参考にした。

X11R6 Sample Implementation Frame Work(日本語訳)

Katsuhisa Yano

TOSHIBA Corporation

Yoshio Horiuchi

IBM Japan

X Version 11, Release 7.7

Permission to use, copy, modify, and distribute this documentation for any purpose and without fee is hereby granted, provided that the above copyright notice and this permission notice appear in all copies. TOSHIBA Corporation and IBM Corporation make no representations about the suitability for any purpose of the information in this document. This documentation is provided as is without express or implied warranty.

(訳)

(本文書を使用、複製、改変、および頒布することは、目的を問わず無償で許可する。但し、上記の著作権表示および本許諾表示を全ての複製に記載しなければならない。TOSHIBA Corporation および IBM Corporation は、本文書に含まれる情報のいかなる目的への適切性についても、何ら表明を行わない。本文書は現状有姿で、明示または暗黙の保証なしに提供される。)

Copyright © 1994 X Consortium

Permission is hereby granted, free of charge, to any person obtaining a copy of this software and associated documentation files (the "Software"), to deal in the Software without restriction, including without limitation the rights to use, copy, modify, merge, publish, distribute, sublicense, and/or sell copies of the Software, and to permit persons to whom the Software is furnished to do so, subject to the following conditions:

The above copyright notice and this permission notice shall be included in all copies or substantial portions of the Software.

THE SOFTWARE IS PROVIDED “AS IS”, WITHOUT WARRANTY OF ANY KIND, EXPRESS OR IMPLIED, INCLUDING BUT NOT LIMITED TO THE WARRANTIES OF MERCHANTABILITY, FITNESS FOR A PARTICULAR PURPOSE AND NONINFRINGEMENT. IN NO EVENT SHALL THE X CONSORTIUM BE LIABLE FOR ANY CLAIM, DAMAGES OR OTHER LIABILITY, WHETHER IN AN ACTION OF CONTRACT, TORT OR OTHERWISE, ARISING FROM, OUT OF OR IN CONNECTION WITH THE SOFTWARE OR THE USE OR OTHER DEALINGS IN THE SOFTWARE.

Except as contained in this notice, the name of X Consortium shall not be used in advertising or otherwise to promote the sale, use or other dealings in this Software without prior written authorization from X Consortium.

X Window System is a trademark of The Open Group.

(訳)

(本ソフトウェアおよび関連する文書のファイル(以下「ソフトウェア」)の複製を取得した全ての人物に対し、以下の条件に従うことを前提に、ソフトウェアを無制限に扱うことを無償で許可する。これには、ソフトウェアの複製を使用、複製、改変、結合、公開、頒布、再許諾、および/または販売する権利、およびソフトウェアを提供する人物に同様の行為を許可する権利が含まれるが、これらに限定されない。)

(上記の著作権表示および本許諾表示を、ソフトウェアの全ての複製または実質的な部分に記載するものとする。 )

(ソフトウェアは「現状有姿」で提供され、明示的であるか黙示的であるかを問わず、いかなる種類の保証も行われない。ここでいう保証には、商品性、特定目的への適合性、および権利の非侵害性に関する保証も含まれるが、これらに限定されるものではない。X CONSORTIUM は、契約、不法行為、またはその他の行為であるかを問わず、ソフトウェアまたはソフトウェアの使用もしくはその他に取り扱いに起因または関連して生じるいかなる請求、損害賠償、その他の責任について、一切の責任を負わない。)

(X Consortium の名称は、この表示に記載されている場合を除き、X Consortium の事前の書面による承認を得ずに、宣伝であろうとその他の形であろうと、ソフトウェアの販売を促進するもの、またはソフトウェアの使用その他の扱いを奨励するものに使用してはならない。)

(X Window System は The Open Group の商標である。)


目次

1. 外から見える枠組み(Framework)
1.1 はじめに
1.2 狙い
1.3. ロケール・オブジェクト・バインディングの関数
1.4. ロケール・メソッドのインターフェイス
1.5. ロケール・メソッドの関数
1.6. 文字集合(Charset)にまつわる関数
1.7. 変換器(コンバータconverter)関連の関数
1.8. X ロケール・データベースに関する関数
1.9 ユーティリティ関数
2. ロケールのメソッドが内部で用いる関数

第1章 外から見える枠組み(Framework)

1. はじめに

この文書では、Xlib の参考実装の内部にあるロケール依存関数の全てで利用できる「構造」、「メソッド」及びその2つの「シグネチャ」を定義する。参考実装の内部にある構成要素群を次の図 (Fig.1) のように分割することを提案する。

Fig.1 : ロケール・サービス API (案)の枠組み

基本的には、Xlib の国際化されている部分(ロケール依存の X、Locale Dependent X、LDX)は、3つの部品(object)から成る。即ち、ロケール(locale、LC)、入力メソッド(input method、IM)、及び出力メソッド(output method、OM)である。LC は、ユーザの言語環境に依存する情報一式を提供する。IM はテキスト入力を管理し、OM はテキストの描画を管理する。IM と OM は、両者とも LC のデータ(LC data)に大きく依存している。

X11R5 には、Xlib の国際化を試みた参考実装が2つ存在する。Ximp と Xsi である。しかし、どちらの実装においても IM と OM は、実際には LC の非公式の拡張を利用(参照)している。これによって、Ximp と Xsi の2つの参考実装は共存できなくなっている。例えば、ユーザが特別な目的のために Ximp の一部として新たな OM を作成した場合、この OM は Xsi とは協働できない。

この問題の解決するために、上記の3つの部品の間の標準 API を定義し、それらの部品に共通の構造を定義する。

2. 狙い

  • X11R6 の現在の参考実装について説明する。

  • 複数のロケール依存インタフェイスの間に存在する共通部分(インタフェイスの共通集合)について、その情報を文書化する。

  • より柔軟で着脱しやすい層を作る。

3. ロケール・オブジェクト・バインディングの関数

この章では、ロケール・オブジェクト・バインディングに関わる関数(着脱可能な層(pluggable layer)を実装するためのもの)について説明する。

ロケール・ローダ(locale loader)は、ロケール・オブジェクトのエントリ・ポイントである。ロケール・ローダは、XLCd オブジェクトをインスタンス化し(具体的な XLCd オブジェクトを作成し)、ロケール・メソッド群を指定されたロケール名と結びつける。ローダの動作は実装依存である。また、利用できるローダの種類も実装依存である。

ローダは _XOpenLC の中で呼び出されるが、_XOpenLC の呼び出しを行う者は、同関数の内側のことを気にする必要は無い。例えば、ローダを実装するにあたって動的に読み込みを行う関数を使用しており、且つ、対応する XLCd を解放する時に、ローダによって動的に組み込まれた機能部品(module)を取り除く(unload)ことが期待されている場合、この取り除き処理は XLCdMethods 構造体の閉じるメソッド(close method)が行うものとする。(訳註:XLCdMethods 構造体は内部に様々な手続きを保持している構造体である。定義は X11R7.7/lib/libX11-1.5.0/src/xlibi18n/Xlcint.h にある。)

ロケール・ローダのリストを初期化する

void _XlcInitLoader()

関数 _XlcInitLoader は、開発企業固有の方法でロケール・ローダ(locale loader)のリストを初期化するものである。各ローダの登録は、_XlcAddLoader を呼び出して行う。リスト内のローダの数と順序は、実装依存である。

ローダを追加する


typedef XLCd (*XLCdLoadProc)(name);
      char *name;

typedef int XlcPosition;

#define   XlcHead
#define   XlcTail

Bool _XlcAddLoader(XLCdLoadProc proc, XlcPosition position);

関数 _XlcAddLoader は、引数「proc」で指定されたロケール・ローダを内部のローダ・リストに登録するものである。引数 position によって、「proc」のローダをローダ・リストの先頭に加えるべきなのか(XlcHead)、それとも末尾(XlcTail)に加えるべきなのかを指定する。

オブジェクト・ローダを呼び出す時は、ローダ・リストの先頭から順番に呼び出すことになる。

ローダを削除する

void _XlcRemoveLoader(XLCdLoadProc proc);

関数 _XlcRemoveLoader は、引数「proc」で指定されたロケール・ローダをローダ・リストから削除するものである。

現在の実装では、以下のロケール・ローダが用意されている。


_XlcDefaultLoader
_XlcGenericLoader
_XlcUtfLoader
_XaixOsDynamicLoad

4. ロケール・メソッドのインターフェイス

この章では、ロケール・メソッドの API について説明する。この API は、IM と OM の両方から利用できる関数を集めたものである。ロケール・メソッドの API は次のような機能を提供する。即ち、ロケール依存の情報を取得する機能、文字集合(charset)を操作する機能、テキストを変換する機能などである。

ロケール・オブジェクトの私的な拡張(開発企業が作ったもの)を利用する代わりに上記の API を用いることで、ロケール、IM 及び OM の3者が互いに独立している状態を保つことができるようになる。

5. ロケール・メソッドの関数

ロケール・メソッドを開く

XLCd _XOpenLC(char *name);

関数 _XOpenLC は、指定されたロケール名に対応するロケール・メソッドを開くものである。_XOpenLC は、ロケール・オブジェクト・ローダ(ロケール・オブジェクトを読み込む手続き)を呼び出す。このローダは、_XlcAddLoader を通じて内部のローダ・リストに登録してあるものである。呼び出されたローダが有効であり且つロケールを開くことに成功した場合、_XOpenLC は XLCd を返す(訳註:XLCd はメソッドとデータを併せ持つ構造体を指す。定義は X11R7.7/lib/libX11-1.5.0/src/xlibi18n/Xlcint.h にある)。呼び出されたローダが有効でなかったか、あるいはロケールを開くことに失敗した場合、_XOpenLC は(リスト中の)次のローダを呼び出す。登録されていたローダ全てでロケールを開けなかった場合、_XOpenLC は NULL を返す。

XLCd _XlcCurrentLC();

関数 _XlcCurrentLC は、現在のロケールに結び付けられている XLCd を返すものである。

ロケール・メソッドを閉じる

void _XCloseLC(XLCd lcd);

関数 _XCloseLC は、引数 lcd で指定されたロケール・メソッドを閉じるものである。

ロケール・メソッドの属性値(values)を取得する

char *_XGetLCValues(XLCd lcd);

関数 _XGetLCValues は、エラーが起きなければ NULL を返す。エラーが起きた場合、取得に失敗した最初の引数の名前を返す。以下の属性が標準の引数として定義されている。これ以外の属性は実装依存である。

属性名 説明
XlcNCodeset char* ロケール名のコードセットを表す部分
XlcNDefaultString char* XDefaultString()
XlcNEncodingName char* 符号化方式の名前
XlcNLanguage char* ロケール名の言語を表す部分
XlcNMbCurMax int ANSI C MB_CUR_MAX
XlcNStateDependentEncoding Bool 状態依存の符号化方式であるか否か(訳註:この文書によると、「state-dependent encoding」 = 「shift encoding」である。シングル・シフトとロッキング・シフトの2つ)
XlcNTerritory char* ロケール名の地域を表す部分

6. 文字集合(Charset)にまつわる関数

XlcCharSet は、ロケール・オブジェクトの中にある文字集合(文字群の部分集合の中の1つ)を表す識別子である。

typedef enum {
      XlcUnknown, XlcC0, XlcGL, XlcC1, XlcGR, XlcGLGR, XlcOther
} XlcSide;

typedef struct _XlcCharSetRec *XlcCharSet;

typedef struct {
      char *name;
      XPointer value;
} XlcArg, *XlcArgList;

typedef char* (*XlcGetCSValuesProc)(charset, args, num_args);
      XlcCharSet charset;
      XlcArgList args;
      int num_args;

typedef struct _XlcCharSetRec {
      char *name;
      XrmQuark xrm_name;
      char *encoding_name;
      XrmQuark xrm_encoding_name;
      XlcSide side;
      int char_size;
      int set_size;
      char *ct_sequence;
      XlcGetCSValuesProc get_values;
} XlcCharSetRec;

XlcCharSet を取得する

XlcCharSet _XlcGetCharSet(char *name);

関数 _XlcGetCharSet は、「name」で指定された文字集合名に対応する XlcCharSet を返すものである。指定された「name」に結び付けられた XlcCharSet が存在しない場合、 _XlcGetCharSet は NULL を返す。

以下の文字集合が予め登録されている。

名前 説明
ISO8859-1:GL 7-bit ASCII graphics(図形文字) (ANSI X3.4-1968)、ISO 8859 セットの左半分
JISX0201.1976-0:GL JIS X0201-1976 (1984 改訂) の左半分、8-Bit Alphanumeric-Katakana Code
ISO8859-1:GR ISO 8859-1 の右半分、Latin alphabet No. 1
ISO8859-2:GR ISO 8859-2 の右半分、Latin alphabet No. 2
ISO8859-3:GR ISO 8859-3 の右半分、Latin alphabet No. 3
ISO8859-4:GR ISO 8859-4 の右半分、Latin alphabet No. 4
ISO8859-7:GR ISO 8859-7 の右半分、Latin/Greek alphabet
ISO8859-6:GR ISO 8859-6 の右半分、Latin/Arabic alphabet
ISO8859-8:GR ISO 8859-8 の右半分、Latin/Hebrew alphabet
ISO8859-5:GR ISO 8859-5 の右半分、Latin/Cyrillic alphabet
ISO8859-9:GR ISO 8859-9 の右半分、Latin alphabet No. 5
JISX0201.1976-0:GR JIS X0201-1976 (1984 改訂) の右半分、8-Bit Alphanumeric-Katakana Code
GB2312.1980-0:GL GB2312-1980, China (PRC) Hanzi defined as GL
GB2312.1980-0:GR GB2312-1980, China (PRC) Hanzi defined as GR
JISX0208.1983-0:GL JIS X0208-1983, Japanese Graphic Character Set defined as GL
JISX0208.1983-0:GR JIS X0208-1983, Japanese Graphic Character Set defined as GR
KSC5601.1987-0:GL KS C5601-1987, Korean Graphic Character Set defined as GL
KSC5601.1987-0:GR KS C5601-1987, Korean Graphic Character Set defined as GR
JISX0212.1990-0:GL JIS X0212-1990, Japanese Graphic Character Set defined as GL
JISX0212.1990-0:GR JIS X0212-1990, Japanese Graphic Character Set defined as GR

XlcCharSet を追加する

Bool _XlcAddCharSet(XlcCharSet charset);

関数 _XlcAddCharSet は、「charset」で指定された XlcCharSet を登録するものである。

文字集合の属性値を取得する

char *_XlcGetCSValues(XlcCharSet charset, ...);

関数 _XlcGetCSValues は、エラーが起きなければ NULL を返す。エラーが起きた場合、値が取得できなかった最初の引数の名前を返す。標準の引数として以下の属性が定義されている。これ以外の属性は実装依存である。

名前 説明
XlcNName char* 文字集合の名前
XlcNEncodingName char* XLFD の CHARSET_REGISTRY と CHARSET_ENCODING(訳註:コードを所有する組織と符号化文字集合)
XlcNSide XlcSide 文字集合の範囲(GL、GR、...)。(訳註:X11R7.7/lib/libX11-1.5.0/src/xlibi18n/XlcPublic.h において、XlcSide の値として次のものが定義されている。XlcUnknown、XlcC0、XlcGL、XlcC1、XlcGR、XlcGLGR、XlcOther(unused)、XlcNONE)
XlcNCharSize int 1文字あたりのバイト数
XlcNSetSize int 文字集合の大きさ(訳註:X11R7.7/lib/libX11-1.5.0/src/xlibi18n/XlcPublic.h によると、「例、94 あるいは 96」とのこと。)
XlcNControlSequence char* Compound Text の制御符号列(control sequence)

7. 変換器(コンバータconverter)関連の関数

コンバータに関する共通 API 一式を用意している。この API は、入力テキストの型と出力テキストの型のどちらにも依存しないものである。

typedef struct _XlcConvRec *XlcConv;

typedef void (*XlcCloseConverterProc)(conv);
      XlcConv conv;

typedef int (*XlcConvertProc)(conv, from, from_left, to, to_left, args, num_args);
      XlcConv conv;
      XPointer *from;
      int *from_left;
      XPointer *to;
      int *to_left;
      XPointer *args;
      int num_args;

typedef void (*XlcResetConverterProc)(conv);
      XlcConv conv;

typedef struct _XlcConvMethodsRec {
      XlcCloseConverterProc close;
      XlcConvertProc convert;
      XlcResetConverterProc reset;
} XlcConvMethodsRec, *XlcConvMethods;

typedef struct _XlcConvRec {
    XlcConvMethods methods;
    XPointer state;
} XlcConvRec;

コンバータ(変換器)を開く

XlcConv _XlcOpenConverter(XLCd from_lcd, char *from_type, XLCd to_lcd, char *to_type);

関数 _XlcOpenConverter はコンバータを開設するものである。このコンバータは、テキストを「from_type」で指定された型の符号化方式から「to_type」で指定された型の符号化方式へと変換する。関数 _XlcOpenConverter は、適切なコンバータを見つけられなかった場合、あるいは該当する(見つけた)コンバータを開けなかった場合、NULL を返す。それ以外の場合、同関数は変換記述子(conversion descriptor)を返す。

以下の型が予め定義されている。これ以外の型は実装依存である。

名前 説明 引数
XlcNMultiByte char * マルチバイト -
XlcNWideChar wchar_t * ワイド文字 -
XlcNCompoundText char * COMPOUND_TEXT -
XlcNString char * STRING -
XlcNCharSet char * 文字集合ごと(per charset) (訳註:意味は X11R7.7/lib/libX11-1.5.0/src/xlibi18n/lcUTF8.c を見るとわかる。) XlcCharSet
XlcNChar char * 文字ごと(per character) (訳註:意味は X11R7.7/lib/libX11-1.5.0/src/xlibi18n/lcUTF8.c を見るとわかる。) XlcCharSet

コンバータを閉じる

void _XlcCloseConverter(XlcConv conv);

関数 _XlcCloseConverter は、「conv」で指定されたコンバータを閉鎖するものである。

符号の変換

int _XlcConvert(XlcConv conv, XPointer *from, int *from_left, XPointer *to, int *to_left, XPointer *args, int num_args);

関数 _XlcConvert は、ある型の文字の並び(from で指定された配列に入っているもの)を別の型の対応する文字の並び(to で指定された配列に入る)へと変換するものである。型は、_XlcOpenConverter の呼び出しの際に指定したものであり、その呼び出しで返る変換記述子「conv」を使って指定する。引数「from」「from_left」「to」「to_left」の意味(仕様)は、XPG4 iconv 関数と同じである。

状態依存の符号化方式(state-dependent encodings:訳註:shift encoding のこと)の場合、_XlcConvert の呼び出しにおいて「from」が NULL ポインタそのものであるか、あるいは「from」が NULL ポインタを指すポインタであれば、変換記述子「conv」は初期シフト状態へと移行する。

ロケールが用意する次の2つのコンバータは、args[0] が指す領域に適切な文字集合(XlcCharSet)を返すものである。

From To 説明
XlcNMultiByte XlcNCharSet 部分(分解済み) (訳註:要確認:Segmentation (Decomposing))
XlcNWideChar XlcNCharSet 部分(分解済み) (訳註:要確認:Segmentation (Decomposing))

XlcNMultiByte/XlcNWideChar から XlcNCharSet への変換では、同じ符号化文字集合の文字群を持つ部分(segment)が抽出される。この関数の呼び出し1回につき1つの部分(segment)しか変換できない。

コンバータをリセットする

void _XlcResetConverter(XlcConv conv);

関数 _XlcResetConverter は、「conv」で指定されたコンバータをリセットするものである。

コンバータを登録する

typedef XlcConv (*XlcOpenConverterProc)(from_lcd, from_type, to_lcd, to_type);
      XLCd from_lcd;
      char *from_type;
      XLCd to_lcd;
      char *to_type;

Bool _XlcSetConverter(XLCd from_lcd, char *from, XLCd to_lcd, char *to, XlcOpenConverterProc converter);

関数 _XlcSetConverter は、(指定された XLCd の)コンバータ・リストにコンバータ1つを登録するものである。ここで登録されるコンバータは、from_type の型から to_type の型への変換を行う。

8. X ロケール・データベースに関する関数

X ロケール・データベースには、言語によって定まるユーザの環境の情報の一部が入っている。以下の API は、X ロケール・データベース及びその他のロケール関連ファイルを利用するために用意されたものである。

X ロケール・データベースについて詳しく知りたければ、X ロケール・データベースの定義に関する文書を見てほしい。(訳註:「X Locale Database Specification」)

データベースからリソースを取得する

void _XlcGetResource(XLCd lcd, char *category, char *class, char ***value, int *count);

関数 _XlcGetResource は、指定された「lcd」のロケールと結び付けられている、ロケール依存のデータを取得するものである。ロケール・データは、システム・ロケールあるいは X ロケール・データベースによって提供される。どんな種類のデータが利用可能であるかは、実装依存である。

指定された「category」と「class」は、目的のロケール・データを見つけ出すために使用するものである。

戻り値は、引数 value に文字列のリスト(配列)の形式で返る。count に返る値によって、value 内の文字列の数がわかる。

value の戻り値はロケール・メソッドが所有しているため、関数 _XlcGetResource を呼び出した者はこれを変更したり解放したりしてはいけない。

ロケールに結びついたファイル名を取得する

char * _XlcFileName(XLCd lcd, char *category);

関数 _XlcFileName は、指定された「lcd」と「category」に結び付けられているファイル名を null 文字終端の文字列の形で返すものである。ファイル名が見つからなかった場合、あるいは見つけたファイル名に対応する読み込み可能なファイルが存在しなかった場合、_XlcFileName は NULL を返す。返ってきたファイル名は、この関数を呼び出した者が解放する。

ファイル名を探す手続きは実装依存である。現在の実装では、_XlcFileName は「{category}.dir」ファイルを対応表として使用している。この表には、完全ロケール名とそれに対応するファイル名とを表す文字列の対が並んでいる。

ユーティリティ関数

Latin-1 文字列を比較する

int _XlcCompareISOLatin1(char*str1, *str2);

int _XlcNCompareISOLatin1(char*str1, *str2, int len);

関数 _XlcCompareIsoLatin1 は、ISO-8859-1 の文字列2つを比較するものである。ASCII の小文字を表すバイトは、比較を行う前に大文字に変換される。戻り値は整数であるが、「str1」が「str2」と比べて辞書的に(1)前にあるか(2)等しいか(3)後にあるかに応じて、0 より(1)小さいか(2)等しいか(3)大きくなる。

関数 _XlcNCompareIsoLatin1 は、最大でも「len」バイトしか比較を行わない点を除き、_XlcCompareISOLatin1 と同じである。

リソース関連のユーティリティ

int XlcNumber(ArrayType array);

XtNumber と同様のもの。

void _XlcCopyFromArg(char *src, char *dst, int size);

void _XlcCopyToArg(char *src, char **dst, int size);

_XtCopyFromArg 及び _XtCopyToArg と同様のもの。

void _XlcCountVaList(va_list var, int *count_ret);

_XtCountVaList と同様のもの。

void _XlcVaToArgList(va_list var, int count, XlcArgList *args_ret);

_XtVaToArgList と同様のもの。

typedef struct _XlcResource {
      char *name;
      XrmQuark xrm_name;
      int size;
      int offset;
      unsigned long mask;
} XlcResource, *XlcResourceList;
#define    XlcCreateMask   (1L<<0)
#define    XlcDefaultMask  (1L<<1)
#define    XlcGetMask      (1L<<2)
#define    XlcSetMask      (1L<<3)
#define    XlcIgnoreMask   (1L<<4)

void _XlcCompileResourceList(XlcResourceList resources, int num_resources);

_XtCompileResourceList と同様のもの。

char * _XlcGetValues(XPointer base, XlcResourceList resources, int num_resources, XlcArgList args, int num_args, unsignedlong mask);

XtGetSubvalues と同様のもの。

char * _XlcSetValues(XPointer base, XlcResourceList resources, int num_resources, XlcArgList args, int num_args, unsignedlong mask);

XtSetSubvalues と同様のもの。

ANSI C 互換の関数

以下に挙げるのは、非 ANSI C 環境のための ANSI C/MSE 互換の関数群である。

int _Xmblen(char *str, int len);

関数 _Xmblen は、「str」が指す文字の個数を返すものである。戻り値となる文字の個数を決めるにあたっては、「str」の中の「len」バイトしか使用しない。「str」が指す文字群の属するコード・セットは、現在のロケールにおける有効なコード・セットであれば何でもよい。

_Xmblen の呼び出しは、_Xmbtowc((wchar_t*)NULL, str, len) と等価である。(訳註:原文は「_Xmbtowc(_Xmbtowc((wchar_t*)NULL, str, len))」)

int _Xmbtowc(wchar_t *wstr, char *str, int len);

関数 _Xmbtowc は、「str」が指す文字群を(同文字群の)ワイド文字表現へと変換し、結果を「wstr」が指す領域に格納するものである。「len」は、「str」中の変換すべきバイトの数である。戻り値は、変換された文字の個数である。

_Xmbtowc の呼び出しは、_Xlcmbtowc((XLCd)NULL, wstr, str, len) と等価である。

int _Xlcmbtowc(XLCd lcd, wchar_t *wstr, char *str, int len);

関数 _Xlcmbtowc は、引数「lcd」が必要である点を除き、_Xmbtowc と同じである。「lcd」が (XLCd) NULL である場合、_Xlcmbtowc は現在のロケールを判断するために _XlcCurrentLC を呼び出す。

int _Xwctomb(char *str, wchar_t wc);

関数 _Xwctomb は、「wc」が指す単一のワイド文字をそのマルチバイト表現へと変換し、結果を「str」が指す領域に格納するものである。成功した場合、戻り値は 1 である。

_Xwctomb の呼び出しは、_Xlcwctomb((XLCd)NULL, str, wstr) と等価である。

int _Xlcwctomb(XLCd lcd, char *str, wchar_t wc);

関数 _Xlcwctomb は、引数「lcd」を必要とする点を除き、_Xwctomb と同じである。「lcd」が (XLCd) NULL である場合、_Xlcwctomb は現在のロケールを判断するために _XlcCurrentLC を呼び出す。

int _Xmbstowcs(wchar_t *wstr, char *str, int len);

関数 _Xmbstowcs は、「str」が指す NULL 文字終端の文字列をそのワイド文字表現へと変換し、結果を「wstr」が指す領域へと格納するものである。「len」は、「str」中の変換すべき文字の個数である。

_Xmbstowcs の呼び出しは、_Xlcmbstowcs((XLCd)NULL, wstr, str, len) と等価である。

int _Xlcmbstowcs(XLCd lcd, wchar_t *wstr, char *str, int len);

関数 _Xlcmbstowcs は、引数「lcd」が必要である点を除き、_Xmbstowcs と同じである。「lcd」が (XLCd) NULL である場合、_Xlcmbstowcs は現在のロケールを判断するために _XlcCurrentLC を呼び出す。

int _Xwcstombs(char *str, wchar_t *wstr, int len);

関数 _Xwcstombs は、 「wstr」が指す (wchar_t) NULL 文字終端のワイド文字列を NULL 文字終端のマルチバイト文字列に変換し、結果を「str」が指す領域に格納するものである。

_Xwcstombs の呼び出しは、_Xlcwcstombs((XLCd)NULL, str, wstr, len) と等価である。

int _Xlcwcstombs(XLCd lcd, char *str, wchar_t *wstr, int len);

関数 _Xlcwcstombs は、引数「lcd」が必要である点を除き、_Xwcstombs と同じである。「lcd」が (XLCd) NULL である場合、_Xlcwcstombs は現在のロケールを判断するために _XlcCurrentLC を呼び出す。

int _Xwcslen(wchar_t *wstr);

関数 _Xwcslen は、「wstr」が指す (wchar_t) NULL 文字終端のワイド文字列に入っているワイド文字の個数を返すものである。

wchar_t * _Xwcscpy(wchar_t *wstr1, wchar_t *wstr2);

wchar_t * _Xwcsncpy(wchar_t *wstr1, wchar_t *wstr2, int len);

関数 _Xwcscpy は、「wstr2」が指す (wchar_t) NULL 文字終端のワイド文字列を「wstr1」が指す対象に複写するものである。「wstr1」も (wchar_t) NULL 文字終端である。戻り値は「wstr1」へのポインタである。

関数 _Xwcsncpy は、「len」個のワイド文字を「wstr2」が指す対象から「wstr1」が指す対象へと複写する点を除き、_Xwcscpy と同じである。

int _Xwcscmp(wchar_t *wstr1, wchar_t *wstr2);

int _Xwcsncmp(wchar_t *wstr1, wchar_t *wstr2, int len);

関数 _Xwcscmp は、(wchar_t) NULL 文字終端のワイド文字列2つを比較するものである。戻り値は整数であるが、「wstr1」が「wstr2」と比べて辞書的に(1)前にあるか(2)等しいか(3)後にあるかに応じて、0 より(1)小さいか(2)等しいか(3)大きくなる。

関数 _Xwcsncmp は、最大でも「len」個のワイド文字しか比較されない点を除き、_XlcCompareISOLatin1 (訳註:多分 _Xwcscmp の間違い)と同じである。

第2章 ロケールのメソッドが内部で用いる関数

(訳註:この章は、元となるHTML文書・PostScript文書・Text文書には載ってない。XML形式の文書にだけコメントアウトされた状態で書き込まれている。)

XlcCharSet _XlcCreateDefaultCharSet(char *name, char *ct_sequence)

Bool _XlcParseCharSet(XlcCharSet charset)

void _XlcGetLocaleDataBase(XLCd lcd, char *category, char *name, char ***value, int *count)

void _XlcDestroyLocaleDataBase(XLCd lcd)

XPointer _XlcCreateLocaleDataBase(XLCd lcd)

ロケール・データベースの経路(path)を取得する

int _XlcResolveI18NPath(char *dir)

関数 _XlcResolveI18NPath は、X ロケール・データベースの経路名のリストを返す。取得した経路は「dir」が指す配列に格納される。この経路は、コロンで区切られた(複数の)ディレクトリ経路から成る。

環境変数 XLOCALEDIR が設定されている場合、取得した経路には同変数の内容が含まれる。

X ロケール・データベースのデフォルトの経路は実装依存である。現在の実装では、デフォルトの経路は構築(build)の時点で決まる。

_XlcResolveI18NPath では、引数「dir」が指す配列のオーバーフロー(配列の容量を超えてしまうこと)の検査は行わない。この関数を呼び出す者が、経路を表す文字列を格納するのに十分なバッファを用意しなければならない。

完全ロケール名(full locale name)を取得する

int _XlcResolveLocaleName(char *lc_name, char *full_name, char *language, char *territory, char *codeset)

関数 _XlcResolveLocaleName は完全ロケール名を返す。取得した完全ロケール名は、引数「full_name」が指す配列に格納される。完全ロケール名の言語、地域、コードセットを表す部分はそれぞれ、戻り値を受け取る引数「language」「territory」「codeset」に複写される。これらの引数に NULL を指定することは可能である。

ロケール名からそれに対応する完全ロケール名を導き出す規則は、実装依存である。

_XlcResolveLocaleName では、「full_name」「language」「territory」「codeset」が指す配列のオーバーフローの検査は行わない。この関数を呼び出す者が、それらの文字列を格納するのに十分なバッファを用意しなければならない。

現在の実装では、_XlcResolveLocaleName は、ロケール名と完全ロケール名の文字列の対を記録している対応表として locale.alias ファイルを用いている。

int _XlcResolveDBName(char *lc_name, char *file_name)

XLCd _XlcCreateLC(char *name, XLCdMethods methods)

void _XlcDestroyLC(XLCd lcd)

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